2019年(令和元年)
令和への改元
天皇徳仁の即位に伴い元号が令和に改まり、出典は初めて日本の古典から選ばれた。
天皇明仁の退位を受け、2019年5月1日に皇太子徳仁親王が新たに天皇として即位し、元号は平成から令和へと改められた。新元号の選定にあたり政府は複数の候補を検討したが、従来の元号がいずれも中国の古典を典拠としてきたのに対し、令和は日本最古の歌集である万葉集の梅花の歌の序文から採られ、日本の古典を出典とする初めての元号となった点が大きな話題を呼んだ。改元に際しては前年から皇位継承に向けた式典が段階的に行われ、即位後には即位礼正殿の儀や祝賀御列の儀など一連の皇室行事が挙行され、国内外から祝賀が寄せられた。今回の改元は天皇の崩御を伴わない生前退位に基づくものであり、社会全体が落ち着いた雰囲気の中で新時代を迎えることができた点でも、昭和から平成への改元とは異なる特徴を持つものとなった。
主な人物:徳仁
政治文化2019年(令和元年)
消費税率10%への引き上げ
消費税率が8%から10%に引き上げられ、食料品などには軽減税率が初めて導入された。
社会保障と税の一体改革をめぐる2012年の三党合意に基づき、消費税率は段階的に引き上げられることとされていたが、景気への影響を懸念した安倍晋三内閣は10%への引き上げを二度延期していた。2019年10月、ようやく消費税率は8%から10%へと引き上げられ、同時に酒類・外食を除く飲食料品や新聞購読料などを対象に、税率を8%に据え置く軽減税率制度が日本で初めて導入された。単一税率であった消費税に複数税率が導入されたことで、店頭やレジでは商品ごとに適用税率を区別する必要が生じ、事業者の対応が求められた。政府は増税に伴う消費の落ち込みを緩和するため、キャッシュレス決済によるポイント還元策なども併せて実施した。この増税により確保された財源は、幼児教育・保育の無償化など社会保障の充実に充てられることとなった。
主な人物:安倍晋三
経済政治2020年〜2023年(令和2年〜令和5年)
新型コロナウイルス感染症の流行
新型コロナウイルスが世界的に流行し、日本でも緊急事態宣言や行動制限が繰り返された。
2019年末に中国湖北省武漢市で報告された新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に拡大し、2020年初頭には日本国内でも感染者が確認されるようになった。政府は2020年4月に初めての緊急事態宣言を発出して外出自粛や休業要請を行い、以後も感染の波が訪れるたびに宣言や、より緩やかなまん延防止等重点措置が繰り返し発令された。マスク着用やテレワークの普及、飲食店の営業時間短縮など、社会生活は大きく変容し、観光や外食などの産業は深刻な打撃を受けた一方、オンライン会議や電子商取引の利用は急速に拡大した。2021年からはワクチン接種が本格化し、感染拡大の抑制に一定の効果を上げた。2023年5月、政府は感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げ、社会経済活動はほぼ平常に復した。
災害経済2021年(令和3年)
2020年東京オリンピック
新型コロナの影響で1年延期された東京オリンピック・パラリンピックが、無観客を中心に開催された。
1964年以来2度目となる東京での夏季オリンピック開催は当初2020年に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、国際オリンピック委員会と日本政府は史上初めて大会の1年延期を決定した。大会名称は開催年を変えず「2020年東京オリンピック」のまま維持され、2021年7月から8月にかけて開催された。感染拡大防止のため、ほとんどの競技会場で観客の入場が制限され、無観客での開催となる異例の大会となった。開催の是非をめぐっては国内世論も割れ、直前まで中止や再延期を求める声も根強かったが、大会は感染対策を講じながら実施され、日本選手団は柔道やスケートボードなどで多くのメダルを獲得した。続くパラリンピックも同様の形式で開催され、障害者スポーツへの社会的関心を高める契機ともなった。
文化2022年(令和4年)
安倍晋三銃撃事件
参議院選挙の応援演説中に安倍晋三元首相が銃撃され死亡する事件が奈良市で発生した。
2022年7月8日、参議院議員選挙の応援演説のため奈良市の近鉄大和西大寺駅前に立っていた安倍晋三元首相が、手製の銃を持った男に背後から銃撃され、搬送先の病院で死亡が確認された。日本の現職・元職首相経験者が凶弾に倒れる事件は戦後初めてであり、要人警護の不備をめぐって警察庁は検証と体制強化に乗り出した。逮捕された実行犯は、家庭の困窮の原因を特定の宗教団体への多額の献金にあると考え、安倍元首相がその団体と関係が深いと信じて犯行に及んだと供述し、この供述をきっかけに旧統一教会こと世界平和統一家庭連合と政治家との関係が社会問題として一気に表面化した。政府は宗教法人への解散命令請求や被害者救済のための新法制定など、教団問題への対応を迫られることとなった。
主な人物:安倍晋三
事件政治2022年(令和4年)
安保三文書の改定
政府が国家安全保障戦略など安保三文書を改定し、反撃能力の保有と防衛費の大幅増額を打ち出した。
ロシアによるウクライナ侵攻や中国の軍備拡張、北朝鮮の弾道ミサイル発射の頻発など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、岸田文雄内閣は防衛政策の抜本的な見直しに着手した。2022年12月、政府は国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画からなる、いわゆる安保三文書の改定を閣議決定した。この改定では、相手のミサイル発射拠点などを攻撃できる反撃能力、いわゆる敵基地攻撃能力の保有が初めて明記され、また今後5年間で防衛費を国内総生産比2%の水準まで倍増させる方針が示された。専守防衛の枠組みをめぐる従来の議論からの大きな転換であるとして、憲法との整合性や財源確保の方法をめぐり国会で活発な論戦が交わされた。この改定は戦後日本の安全保障政策における歴史的な転換点として位置づけられている。
主な人物:岸田文雄
政治外交2023年(令和5年)
新型コロナウイルス感染症の5類移行
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた。
2020年以来、新型コロナウイルス感染症は感染症法上、結核などと同じ2類相当の厳格な措置が適用される指定感染症とされ、患者の入院勧告や就業制限、行政による幅広い関与が続けられてきた。しかしワクチン接種の普及や治療法の確立により重症化率が大きく低下したことを受け、政府は2023年5月8日、感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ5類感染症に引き下げた。これにより外出自粛の要請や入院勧告といった行政による強制的な関与は原則として終了し、マスク着用も個人の判断に委ねられることとなった。医療機関の受診は幅広い医療機関で可能となる一方、医療費の一部自己負担も段階的に導入された。この移行により約3年に及んだコロナ禍対応の特別な枠組みは事実上終わりを迎え、社会経済活動は本格的に平常への復帰を進めることとなった。
政治災害2023年〜2024年(令和5年〜令和6年)
政治資金パーティー収入の裏金問題
自民党派閥の政治資金パーティー収入の一部が政治資金収支報告書に記載されず、裏金化していたことが発覚した。
自民党の複数の派閥が開催する政治資金パーティーをめぐり、所属議員に割り当てられたノルマを超えて集めたパーティー券収入の一部が、派閥から議員側に還流されながら政治資金収支報告書に記載されず、裏金として扱われていた実態が2023年秋に検察の捜査を通じて明らかになった。特に安倍派を中心に長年にわたり組織的な不記載が続けられていたとされ、2024年に入ると会計責任者や国会議員が政治資金規正法違反の疑いで相次いで立件された。この問題を受けて岸田文雄内閣の支持率は大きく低下し、安倍派を中心とする派閥の解散や政治資金規正法の改正論議へと発展した。同年10月の衆議院議員総選挙でも裏金問題は大きな争点となり、有権者の自民党への不信を招く一因となった。この事件は政治とカネをめぐる長年の課題を改めて浮き彫りにした。
政治事件2024年(令和6年)
第1次石破内閣の発足
自民党総裁選で勝利した石破茂が第102代内閣総理大臣に選出され、内閣を発足させた。
岸田文雄首相が派閥の裏金問題の責任を取る形で自民党総裁選への不出馬を表明したことを受け、2024年9月、自民党総裁選挙が実施された。9人という過去最多の候補者が乱立する中、決選投票の末に石破茂が高市早苗を破って新総裁に選出された。石破は防衛政策や地方創生に精通した政治家として知られ、党内では非主流派とされながらも国民的な人気を背景に総裁の座を射止めた。同年10月1日召集の臨時国会で石破は第102代内閣総理大臣に指名され、内閣を発足させた。石破首相は就任早々、政権の信を問うとして衆議院を解散する方針を示し、短期間での総選挙実施を決断した。裏金問題への対応が不十分との批判もある中でのスタートとなり、政権運営は発足当初から厳しい環境に置かれることとなった。
主な人物:石破茂
政治2024年(令和6年)
令和6年能登半島地震
石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、多数の死者と甚大な被害が生じた。
2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生し、石川県輪島市と志賀町で最大震度7を観測した。元日の夕方という帰省や旅行で人の移動が多い時間帯を襲った地震であり、津波警報も発表されて日本海沿岸部の住民が高台への避難を余儀なくされた。輪島市の朝市通りでは大規模な火災が発生して多数の建物が焼失したほか、半島特有の狭隘な地形により道路の寸断が相次ぎ、孤立集落への支援や物資輸送が難航した。上下水道の復旧にも長期間を要し、高齢化率の高い能登地方では多くの被災者が長期の避難生活を強いられた。政府は激甚災害に指定して復旧・復興支援に取り組んだが、半島特有の地理的制約が救援活動を長期化させ、今後の災害対応のあり方に多くの教訓を残す震災となった。
災害2024年(令和6年)
2024年衆議院議員総選挙
自民党と公明党の与党が裏金問題への批判を受けて過半数を割り込む大敗を喫した。
石破茂内閣は発足直後の2024年10月9日に衆議院を解散し、同月27日に総選挙が実施された。選挙戦では自民党派閥の裏金問題が最大の争点となり、政治とカネをめぐる自民党への不信が有権者の間に広がっていた。開票の結果、自民党は公示前から議席を大きく減らし、公明党と合わせた与党の獲得議席は233議席にとどまり、過半数の233議席を辛うじて下回って自公連立政権として過半数割れとなった。野党第一党の立憲民主党は議席を大きく伸ばし、国民民主党も現有議席を大幅に上回る躍進を見せた。与党過半数割れは2009年の政権交代以来のことであり、石破内閣は少数与党として国会運営を強いられることとなった。この結果を受けて政府は野党の協力を得ながら予算案などを成立させる、いわゆる部分連合的な国会運営を模索することとなった。
主な人物:石破茂
政治2025年(令和7年)
高市早苗内閣の発足
自民党総裁選に勝利した高市早苗が第104代内閣総理大臣に就任し、憲政史上初の女性首相となった。
2025年9月、石破茂首相が衆参両院選挙での連敗と党内の求心力低下を受けて退陣を表明したことにより、自民党総裁選挙が実施された。決選投票の末、党内保守派の支持を集めた高市早苗が小泉進次郎らを破って新総裁に選出された。高市は経済安全保障担当大臣などを歴任した政治家であり、安倍晋三元首相の政策路線を強く継承する立場として知られていた。連立協議の混乱を経て、同年10月21日の国会において高市は第104代内閣総理大臣に指名され、内閣を発足させた。これにより日本の憲政史上初めて女性が内閣総理大臣に就任することとなり、国内外から大きな注目を集めた。高市内閣は積極財政と防衛力強化を掲げて政権運営に着手したが、少数与党という不安定な政治状況のもとでの船出となった。
主な人物:高市早苗
政治2025年(令和7年)
世界平和統一家庭連合への解散命令
東京地裁が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し宗教法人法に基づく解散命令を出した。
2022年の安倍晋三銃撃事件を契機に、世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会をめぐる高額献金や霊感商法など組織的な不法行為の実態が社会問題として広く注目された。文部科学省は民法上の不法行為を含めて宗教法人法の解散事由に該当するとの立場から調査を進め、2023年10月に東京地方裁判所へ解散命令を請求した。東京地裁は2025年3月25日、教団の組織的な献金勧誘が民法上の不法行為に当たるとして、初めて民法の不法行為を根拠に宗教法人の解散を命じる決定を下した。教団側は即時抗告したが、東京高等裁判所も解散命令を支持し、最終的に最高裁判所によって解散命令は確定するに至った。解散命令の確定により教団は法人格を失って清算手続きに入ることとなり、信教の自由と被害者救済の両立という難しい課題を日本社会に投げかけた事件となった。
事件政治2025年4月〜10月(令和7年)
2025年日本国際博覧会
大阪・夢洲を会場に「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする大阪・関西万博が開催された。
1970年の大阪万博から55年ぶりとなる大阪での国際博覧会として、2025年日本国際博覧会、通称大阪・関西万博が大阪湾の人工島である夢洲を会場に開催された。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、2025年4月13日から10月13日までの184日間にわたり開催され、多数の国と国際機関が参加してパビリオンを出展した。大屋根リングと呼ばれる木造の巨大な環状建築物が会場の象徴として建設された一方、会場建設費の度重なる増額や、人工島特有の軟弱地盤に起因するメタンガス爆発事故、当初伸び悩んだ前売り券販売など、開催準備の過程では課題も少なくなかった。開幕後は再生医療や人工知能など最先端技術の展示に加え、各国文化の紹介などを通じて国内外から多くの来場者を集め、日本の技術力と国際協調の発信の場として位置づけられた。
文化経済